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カーボンニュートラルの義務は
個別制度ごとに異なります
2050年カーボンニュートラルは国の政策目標です。企業に生じる具体的な法的義務は、直接CO2排出量、エネルギー使用量、上場区分と時価総額、建築行為、自治体の条例など、個別制度の対象要件によって変わります。
最初に、この3つを切り分けてください。中小企業でも特定の基準に該当すれば、報告義務などの対象になります。その一方で、法律の直接対象でなくても、取引先のScope3算定に伴って排出量データの提供を求められることがあります。
自社に関係する制度は、会社の大きさだけでは決まりません。次の4項目を照らし合わせると、どこから詳しく調べるべきかが見えてきます。
GX-ETS
前年度までの3年度平均で直接CO2排出量が10万トン以上の事業者が対象です。2026年度から算定・届出などが始まっています。
省エネ法・温対法
事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kl以上か、温室効果ガス排出量などの基準に該当する事業者には、計画・定期報告・排出量報告などの義務があります。
SSBJ基準に沿った開示
公布済み制度の直接対象は、東証プライム市場に上場し、過去5事業年度末の平均時価総額が1兆円以上の会社です。対象規模に応じて段階適用されます。
建築物の省エネ・太陽光発電設備
2025年4月以降に着工する住宅・建築物は、原則として新築・増改築時に省エネ基準への適合が必要です。太陽光発電設備は、自治体ごとに対象と義務主体が異なります。
大手取引先から排出量データや削減計画の提出を求められることがあります。法的義務とは限りませんが、取引条件や調達方針に関わるなら、実務上の優先度は低くありません。
GX-ETSは、CO2の排出枠を割り当て、実績に応じて排出枠を保有・償却する制度です。対象になるのは、前年度までの3年度平均の直接CO2排出量が10万トン以上の事業者。売上高や従業員数ではなく、直接排出量が判定軸です。
2026年度は4月1日から直接排出量などを算定し、対象事業者は9月30日までに該当の届出を行います。初年度の排出枠割当は2027年度、2026年度実績分の償却期限は2028年1月31日です。
初年度は、算定から償却まで一気に進むわけではありません
2026年度中に提出する対象該当の届出と移行計画には、登録確認機関による確認は求められません。ただし、2026年度の排出実績量などを2027年9月30日までに報告・届出する段階では、登録確認機関による法定の確認が必要です。その後、対象事業者は排出枠の割当・保有を経て、2028年1月31日までに2026年度分を償却します。
対象判定だけで手続きを終えず、翌年度の法定確認に耐えられる算定根拠を残しておくことが実務上のポイントです。請求書、計測値、排出係数、集計過程の所在まで、早めにそろえておきましょう。
省エネ法では、事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kl以上になると特定事業者に指定され、中長期計画書と定期報告書の提出が必要です。中長期的に年平均1%以上のエネルギー消費原単位改善を目指すことは努力目標であり、毎年度1%削減を必ず達成する結果義務ではありません。
温対法の算定・報告・公表制度では、特定排出者に温室効果ガス排出量の算定と国への報告が義務付けられます。エネルギー起源CO2は原則として、事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kl以上の場合が対象です。
非エネルギー起源CO2やメタンなどは、ガスの種類ごとにCO2換算3,000トン以上、かつ事業者全体の常時使用従業員が21人以上の場合が対象となります。輸送事業者・荷主には別の要件もあるため、該当する事業者は制度概要の対象者区分まで目を通してください。
SSBJ基準に従ったサステナビリティ情報の開示は、すべての上場会社に同時に義務化されたわけではありません。公布済み制度では、東証プライム市場の上場会社のうち、過去5事業年度末の平均時価総額が1兆円以上の会社が対象です。
SSBJの気候基準にはScope3排出量が含まれます。ただし、法令に基づいて初めてSSBJ基準を適用する年度は、Scope3排出量の開示を省略できる経過措置があります。
2025年4月以降に着工する住宅・建築物は、原則として新築・増改築時に省エネ基準への適合が必要です。増改築の場合、対象になるのは増改築する部分。建築を予定している方は、適用除外の有無も含め、着工日、用途、規模を制度要件と照らし合わせてください。
東京都の建築物環境報告書制度も2025年4月に始まりました。直接の義務主体は、都内で延べ面積2,000㎡未満の中小規模新築建物を年間合計2万㎡以上供給する特定供給事業者です。太陽光発電設備を含む制度への対応は、特定供給事業者側に求められます。
自治体によって対象建物、義務主体、設備要件は変わります。建築地が決まった段階で、条例と制度要綱まで目を通しましょう。
排出量を一度算定しても、すべての制度へそのまま使えるとは限りません。まず対象期間、組織境界、データ品質の差分を確かめ、必要な項目だけ調整・補完しましょう。
GX-ETSは、前年度までの3年度平均の直接CO2排出量で対象を判定します。温対法では、CO2・メタン・一酸化二窒素の算定期間が4月1日から翌年3月31日までである一方、HFC・PFC・SF6・NF3は1月1日から12月31日までです。
SSBJ開示は、関連する財務諸表と同じ報告期間が原則になります。法令用データの算定期間と決算期間がずれる場合、重要性を踏まえて合理的な期間調整が必要になることがあります。数字を転記する前に、何年度の、どの期間を切り取った値かを押さえてください。
温対法の算定・報告・公表制度で使った値は、Scope1・2算定に利用できる場合があります。ただし、建設現場の建設機械や、輸送事業者以外が所有する自家用車など、温対法の報告対象外でもScope1・2では追加算定が必要になる活動があります。
既存データは捨てずに活用できます。ただし、そのまま転用せず、対象会社、拠点、活動、Scope区分の差分を先に洗い出すのが安全です。
SSBJ基準では、直接測定データ、一次データ、対象となる活動・地域・期間を忠実に表すデータ、検証済みデータを、それぞれ対応する代替データより優先します。ただし、この4条件に固定の優先順位はありません。
つまり、一次データというラベルだけで品質は決まりません。製品や活動を適切に表しているか、対象年度が合っているか、検証済みかまで見たうえで、担当者は採用データを選びましょう。
Scope3初年度免除中に、次年度以降のデータ設計を進める
法令上の初年度免除は、Scope3開示を省略できる経過措置です。免除後の開示では、使用データの決定方法、一次データを使った範囲、検証済みデータを使った範囲などが問われます。企業担当者は免除期間を利用して、算定範囲とデータ源を整理しておくと、次年度の作業を進めやすくなります。
中小企業であることだけを理由に、すべての制度の対象外になるわけではありません。省エネ法や温対法の基準に該当する事業者、対象となる建築行為をする事業者には、該当制度の義務が生じます。
一方、GX-ETSやSSBJ開示の直接対象でなくても、大手企業がScope3を算定する過程で、サプライヤーにデータ提供を求めることがあります。依頼を受けた企業は、回答に着手する前に、利用目的と算定条件を依頼元に尋ねましょう。
取引先からの依頼を7項目に分けて読み解く
これは一律の法定チェックリストではありません。依頼条件の食い違いを減らし、再集計を避けるための実務上の切り分けです。
組織単位の一次データを渡す場合も、対象となるScope・カテゴリや期間、取引先製品への配分方法が曖昧なままでは、依頼元がその数値を使えないことがあります。回答期限だけでなく、利用目的と算定条件まで聞いておきましょう。
3年度平均の直接CO2を算出
まず、前年度までの直接CO2排出量を3年度分そろえ、平均値を出してください。10万トン以上なら、GX-ETSの対象判定へ進みましょう。
エネルギー使用量を原油換算
事業者全体の年間使用量を原油換算し、1,500klの基準に照らしてください。温対法では、ガス種類別の排出量や従業員数、輸送に関する別要件も見落とせません。
市場区分と時価総額を照合
東証プライム上場会社は、過去5事業年度末の平均時価総額を算出し、適用開始年度と突き合わせてください。Scope3の経過措置は別枠で整理しておきましょう。
着工日と自治体条例を見る
新築・増改築の着工日、規模、用途、建築地を一覧にしてください。太陽光発電設備については、自治体ごとの義務主体と要件まで目を通しましょう。
対象制度を絞り込んだら、数字を毎年更新できる状態へ移行しましょう。担当者の記憶に頼る運用では、制度対応や取引先への回答が重なるたびに集計をやり直すことになりかねません。
証憑と使用量データをまとめる
電気、都市ガス、燃料、社用車、物流などの請求書・使用量データを、拠点と期間が分かる形でそろえておきましょう。
算定と回答の担当を分ける
環境部門だけに任せず、経理、総務、調達、製造、物流、IRなど、必要なデータを持つ各部署の役割まで決めておきましょう。
法令対応と取引先対応を別に記録
質問票の目的、対象期間、算定範囲、回答期限を記録してください。法令上の提出物と、取引先が求めるデータを同じ表に混ぜないことがポイントです。
削減策を実施条件で比べる
設備更新、運用改善、再生可能エネルギーの活用などを、削減見込み、費用、実施時期で比較し、優先順位を付けましょう。支援制度を使うなら、契約・発注前に公募要領へ目を通してください。
監修企業・豊国エコソリューションズに聞きました
企業から寄せられやすい疑問には、法的義務と実務上の要請が混在しています。
2050年カーボンニュートラルは国の政策目標です。企業の具体的な法的義務は、GX-ETS、省エネ法、温対法、サステナビリティ開示、建築物関連制度など、個別制度の対象要件に応じて発生します。
会社規模ではなく、前年度までの3年度平均の直接CO2排出量で判定します。10万トン以上なら中小企業でも対象になり得ます。基準未満でも、取引先のScope3対応に伴って排出量データを求められる場合があります。
2026年8月時点の公布済み制度は、東証プライム市場に上場し、過去5事業年度末の平均時価総額が1兆円以上の会社を直接対象としています。適用時期は規模によって異なり、初年度のScope3開示には経過措置があります。
引用元:豊国エコソリューションズ公式サイト(https://carbonneutral-hokoku.lp-essence.com/)
豊国エコソリューションズは、環境・エネルギー領域におけるソリューションを提案しているコンサルティング会社です。補助金・助成金を活用したコンサルティングの豊富な採択実績をはじめ、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や排出権取引に関するサービスも提供しています。
有資格者数も多く、専門的かつ多角的なサポートを受けられるのも特徴。カーボンニュートラル分野での実績が豊富で、顧客のニーズを踏まえた提案を行っています。
豊国エコソリューションズは、省エネに関する補助金を活用した事業において、高い採択率・採択数の実績を有しています。補助事業の採択率は、2016年〜2020年9月の実績で94%を実現。提案した事業のほとんどが採択されています。一方、採択数も2011年〜2020年9月の累計で563件を数えるなど、豊富な実績を有しています。
※設備更新や補助金活用、再エネ導入検討、運用改善、SBT認証取得、製品・サービスのLCA実施などについて簡易的なアドバイスを行っています。