01
エネルギーコストと生産性を同時に見直せる
待機運転、エア漏れ、過剰な圧力・温度設定、歩留まり低下は、CO2だけでなく製造コストにも影響します。省エネを環境施策だけにせず、原価改善や保全と同じ管理対象にすると現場へ定着しやすくなります。
このメディアは、株式会社豊国エコソリューションズの監修・取材協力のもとZenken株式会社が制作・運用しています。
製造業のカーボンニュートラル
設備を買う前に排出源を測り、削減効果の大きい順に進めましょう
製造業のカーボンニュートラルは、「測る→減らす→エネルギーを切り替える→取引先とつなぐ」の順で考えると、投資の空振りを抑えやすくなります。最初から太陽光発電や大型設備の導入に絞る必要はありません。
まず電力・燃料の請求データを工場、工程、主要設備へ分け、停止時間を含む負荷を把握してください。そのうえで運転条件や保全を見直し、残った需要に設備更新や再エネ、燃料転換を組み合わせましょう。取引先から製品別排出量を求められる場合は、組織全体の排出量とは別にCFPの算定設計が必要です。
総量と原単位を併用
熱と電力を分けて検討
削減とオフセットを区別
2024年度、産業部門は日本のエネルギー起源CO2の約37%を占め、その産業部門の排出量の9割超が製造業でした。とはいえ、排出構造は業種や工程によって大きく異なります。製造業という括りだけで対策を決めず、自社の設備・熱・原材料・物流を分けて見ることが出発点です。
01
エネルギーコストと生産性を同時に見直せる
待機運転、エア漏れ、過剰な圧力・温度設定、歩留まり低下は、CO2だけでなく製造コストにも影響します。省エネを環境施策だけにせず、原価改善や保全と同じ管理対象にすると現場へ定着しやすくなります。
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取引先のScope3対応が調達先へ波及する
自社が制度の直接対象でなくても、取引先から組織別・製品別の排出データや削減計画を求められる場合があります。これはGX-ETSの直接義務とは別の、サプライチェーン上の要請です。
03
更新時期を逃すと高排出設備が長く残る
炉、ボイラー、コンプレッサー、生産設備は長期間使われます。故障直前に代替機を選ぶのではなく、更新計画と脱炭素ロードマップを合わせておくと、電化や燃料転換も比較できます。
04
制度対象かどうかを排出量で確認する必要がある
2026年度に始まるGX-ETSは、製造業一律ではありません。前3年度平均の直接CO2排出量が年10万トン以上の事業者が対象です。対象該当性は、制度上の算定境界と排出量に基づいて判定されます。
※参照元URL:環境省「2024年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(概要)」(https://www.env.go.jp/content/000394131.pdf)/環境省「2024年度 温室効果ガス排出・吸収量の詳細情報」(https://www.env.go.jp/content/000408510.pdf)/経済産業省「排出量取引制度」(https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ets.html)/資源エネルギー庁「サプライチェーン連携型省エネ・非化石転換支援」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/chiiki_partnership/news/2026/supply_chain_teamup.html)
Scope1〜3は「排出が自社内か、購入エネルギーか、サプライチェーンか」を整理する区分です。一方、削減策を決めるには「どの工程・設備で、いつ、何のためにエネルギーを使ったか」まで分解する必要があります。Scopeだけでは設備投資の優先順位までは決まりません。
| 区分 | 製造業の主な排出源 | 最初に集めるデータ | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| Scope1 | ボイラー、炉、乾燥、構内車両、工業プロセスなどの直接排出 | 燃料購入量、設備別稼働時間、温度・圧力、生産量 | 運転改善、高効率化、電化、燃料転換、プロセス変更 |
| Scope2 | 購入した電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出 | 請求書、設備別電力、稼働時間、契約電力 | 省エネ、ピーク対策、再エネ導入 |
| Scope3 | 原材料、資本財、物流、廃棄物、販売製品の使用・廃棄など | 購入量・金額、重量、輸送距離、廃棄量、製品仕様 | 材料変更、軽量化、歩留まり改善、物流改善、回収・循環設計 |
※参照元URL:環境省「サプライチェーン排出量の算定」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html)
排出総量だけでなく「原単位」も追いましょう
生産量が減れば、改善をしていなくても排出総量は下がります。反対に、増産期は効率が上がっていても総量が増えることがあります。そこで、工場全体のCO2排出量に加え、エネルギー使用量÷生産数量・重量・稼働時間などの原単位も併用しましょう。
分母は、エネルギー使用量との関係が説明できるものを選んでください。製品構成が大きく変わる工場では、製品群や工程ごとに分けないと改善効果を見誤るため注意が必要です。
※参照元URL:資源エネルギー庁「エネルギー消費原単位の考え方」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2017html/1-2-2.html)/環境省「2024年度 温室効果ガス排出・吸収量の詳細情報」(https://www.env.go.jp/content/000408510.pdf)
すべての企業に固定の手順があるわけではありません。ただ、排出源が見えないまま設備を選ぶより、計測から投資判断へ進むほうが効果を検証しやすくなります。
目的と算定範囲を決める
コスト削減、取引先回答、法令対応、製品CFPでは必要なデータが異なります。対象会社・工場・年度、Scope、製品範囲、更新頻度を最初に決めましょう。
請求データから全体像をつかむ
電力、都市ガス、LNG、LPG、重油、灯油などを月別に並べ、使用量をCO2排出量へ換算してください。拠点別の総量が見えたら、主要工程や設備へ計測範囲を絞りましょう。
停止時を含めて負荷を分解する
生産中だけでなく、休憩、段取り、非稼働日にも消費が続く設備を探してください。コンプレッサー、空調、ポンプ、炉の待機運転は、設備更新前に運用で減らせる余地がないか確かめましょう。
削減策を費用・効果・実行条件で並べる
設定変更、漏れ・保温・清掃、部分改修、設備更新、電化、再エネの順に候補を出し、年間削減量、投資額、保全費、停止工事、品質への影響を比べてください。
月次で計画と実績を見直す
年度末の集計だけで終わらせず、総量と原単位を月次で確かめましょう。生産量、気温、品種、設備停止などの変化を添えると、未達の原因を次の改善へつなげられます。
※参照元URL:資源エネルギー庁「省エネ診断メニュー比較表」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/pdf/shindan_hikaku_260428.pdf)/環境省「工場・事業場における低コスト対策」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/special/industry_factory_cost.html)
運転時間、設定温度、吐出圧、流量、待機状態を見直し、フィルター清掃、蒸気・圧縮エア漏れ、断熱劣化を点検してください。低コストで実行できる可能性がありますが、品質や安全に関わる設定は設備担当・品質担当と確認して変更しましょう。
高効率設備でも、過大容量や低負荷運転では期待した効果が出ないことがあります。更新前の計測値から必要容量と運転パターンを確認し、初期費用だけでなく、年間エネルギー費、保全費、停止工事、耐用期間を含めて比べてください。
熱需要は温度帯や工程特性によって適する対策が変わります。熱回収、断熱、燃焼管理で必要熱量を減らしたうえで、電化や非化石燃料への転換を比較しましょう。温度、品質、電力容量、設備スペース、燃料供給まで確認して選ぶ必要があります。
※参照元URL:経済産業省「第7次エネルギー基本計画」(https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf)
先に無駄な電力を減らすと、必要な再エネ導入量や設備容量も見直せます。生産時間帯の電力負荷と導入可能量を照らし合わせ、自社の条件に合う方法を検討してください。
すべてのカテゴリを同じ精度で集めるより、原材料、外注加工、物流、販売製品の使用など、排出量が大きい領域を概算し、自社が仕様・調達・設計を通じて変えられる領域から深掘りしましょう。データ提出を仕入先へ依頼する際は、対象年度、単位、算定範囲、一次データか二次データかを揃えてください。
CFPは、特定の製品・サービスについて、原材料調達から生産、流通、使用、廃棄・リサイクルまでの温室効果ガス排出量をCO2換算するものです。工場全体の排出量を製品数で割るだけでは、製品ごとの材料や工程差を適切に表せない場合があります。
※参照元URL:環境省「カーボンフットプリント(CFP)の算定」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/cfp_calculation.html)/経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」(https://www.env.go.jp/content/000124385.pdf)
2つの事例に共通するのは、個別施策を先に決めず、製品への環境価値の伝え方や設備投資の時期から必要な支援を組み立てている点です。
CASE 01
砕石製造業:クレジット購入の前に製品別排出量と訴求方法を整理
砕石製造業を手がけるF産業は、自社製品の付加価値を高める方法としてJ-クレジットの購入を検討していました。ただし、クレジットの活用と製品自体の排出削減は別の取り組みです。顧客へ何を伝えるのかを決めたうえで、算定・削減・オフセットを組み合わせる必要がありました。
クレジット購入だけを先に決めず、製品単位の算定と自社の削減計画を組み合わせる方針を提案しました。
CASE 02
大手製造業:設備投資計画と補助事業の工程を連動
大手製造業のA社は、中長期の投資、エネルギー転換、開発構想を進めるにあたり、活用できる補助事業と準備時期を判断できる相談先を探していました。
設備仕様を補助金に合わせるのではなく、中長期計画に合う支援制度を選び、申請準備を前倒しする方針を提案しました。
監修:株式会社豊国エコソリューションズ
経営層への説明と、工場で最初に確認したい排出源を整理しています。
環境貢献だけでなく、原価、取引、設備更新の3点で説明すると伝わりやすくなります。運用・設備効率はエネルギー費、取引先のScope3対応はデータ提出、長寿命設備の選択は将来の排出量に関わるためです。
なお、2026年度開始のGX-ETSは全製造業が対象ではありません。前3年度平均の直接CO2排出量が年10万トン以上の事業者が直接の対象です。
月別の電力・燃料データで大きな排出源を絞り、次に工程別・設備別へ分けてください。生産設備、コンプレッサー、空調、ポンプなどの電力と、ボイラー、炉、乾燥、蒸気配管などの熱を分け、停止時の消費、温度、圧力、流量を確かめましょう。
設備の定格容量だけでは実際のロスは分かりません。稼働状況とエネルギー使用量を結び付け、改善前後は総量と原単位で比べてください。材料・物流まで広げる場合は、購入量、歩留まり、輸送距離、廃棄量を整理してください。
引用元:豊国エコソリューションズ公式サイト(https://carbonneutral-hokoku.lp-essence.com/)
豊国エコソリューションズは、環境・エネルギー領域におけるソリューションを提案しているコンサルティング会社です。補助金・助成金を活用したコンサルティングの豊富な採択実績をはじめ、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や排出権取引に関するサービスも提供しています。
有資格者数も多く、専門的かつ多角的なサポートを受けられるのも特徴。カーボンニュートラル分野での実績が豊富で、顧客のニーズを踏まえた提案を行っています。
豊国エコソリューションズは、省エネに関する補助金を活用した事業において、高い採択率・採択数の実績を有しています。補助事業の採択率は、2016年〜2020年9月の実績で94%を実現。提案した事業のほとんどが採択されています。一方、採択数も2011年〜2020年9月の累計で563件を数えるなど、豊富な実績を有しています。
※設備更新や補助金活用、再エネ導入検討、運用改善、SBT認証取得、製品・サービスのLCA実施などについて簡易的なアドバイスを行っています。